2007年 10月 05日
第4章 第30話 |
ここは地球の軌道を廻る宇宙ステーションのなかでした。窓の外には青々とした海を湛えた地球が広がっています。
「お父さん、どこに人類は行こうとしてるの?」
「いま、目指してるのは、銀河系の中心部にあるオルガ惑星で、地球から2万光年離れている。最新の観測によれば、地球のおおよそ20万年前の姿に似ている。」
「20万年前といえば、火を使うネアンデルタール人の化石が発見された時代ね。」
「そうだ、人類が新たな生活を始めるのにふさわしいと考えられる。」
「でも、どうやってそんな遠くに。エウロパに行ったときの速度がほぼ光速だとしても、2万年もかかってしまうわよ。パシーナでいけるのかしら。」
「パシーナでテレポートするには、行く先にもパシーナがあることが条件だ。そのため、まず誰かが、パシーナを持って先にオルガ惑星に行く必要がある。宇宙船のエンジンは複数のエディットをシンクロさせることに成功した。超光速の船だ。2年でたどり着ける。」
「それは、私の役目のようね。」
「行ってくれるか七海。パシーナを上手く操れるのは私と七海しかいない。私は地球で指揮を執る。先にいって、後発隊をパシーナで呼び寄せるんだ。
それに何も無い星で今の人類は生きてはいけないから、開拓者が先行して入っていき、人類の移動が完了するまで10年近くかかると想定している。それまで、地球に住ましてもらえるかどうかだ。」
「ほんとうに地球はこのまま気温が上昇するのかしら。もし、このまま変わらないとしたら。」
「それは、全人類が望んでいることだ。結果的にそうなればいいじゃないか。そうならなかった時のために私達はやれることをやっておくのだ。それに地球はもう人間で飽和している。巣立ちの時がやってきたのだよ。私たちを育ててくれた地球に感謝して、あとは地球の成長を見守るしかないのだよ。
オルガ星以外にも住めそうな星を探しているところだ。この地球が与えれくれた超光速の船とパシーナがあれば、宇宙を自由に行き来できる。これこそが地球の遺伝子を運ぶ我々の役目だろう。」
2080年
無事にオルガ星にたどり着いた私たち先発隊は、パシーナのテレポート機能で、開拓隊を受け入れました。その海はどこまでも深く青く、陸は豊かな森をつくっていました。そこでその惑星の自然と共存する、ゆとりをもった生活を始めたのです。そして、オルガ星を足がかりに次々と住める惑星を探しだすことが出来たのでした。
2087年
久しぶりに戻った地球。気温の上昇は止まらず、平均気温が40度を超えました。海面が上昇し陸地がわずかに残るのみとなってしまいました。そして、その海は緑色に染まっていました。
GREEN PLANET 完
みなさん、長い間ご愛読ありがとうございました。はじめは夏限定の10話程度の予定でしたが、ご支援に支えられて30話にも及んでしまいました。拙い文章で、伝えたかったことが十分表現できませんでしたが、暖かいコメントやアクセス数の多さを励みにしていました。
私たちは、これから銀河という広い世界で生きていくことになりました。これだけ住む場所が増えたのに、争いは絶えません。そして、銀河の外の生命体との出会いも。また機会があれば、その様子をお伝えします。
地球暦2087年 七海
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by susabi77
| 2007-10-05 11:05