2007年 10月 03日
第4章 第29話 |
警備兵が私の腕をつかもうとした瞬間に逃げ出すしかなかった。今の時代に魔女呼ばわりするとは正気の沙汰ではない。部屋を走り出ながら、パシーナを握り締めた。ロビーに出ると正面からも警備兵が向かってくる。
グリーンパラダイス社の中で逃げる場所などあるはずはなかった。あっという間に警備兵に囲まれてしまった。
「生意気な魔女め、みんなも心を読まれないように気をつけるのよ。」こんなことになるのなら、瞬時に心を読み取れるように訓練しておけばよかった。
「何が起こるかわからないから、すぐに処刑して!逃げられたら面倒よ。事故に見せかけるのよ!」そんな無茶な。必死でパシーナを握り締めたが意識を集中できない。パシーナは、かすかに脈動し始めたけれど、父の応答がない。
取り囲む警備兵の中から強靭そうな一人が銃を構えて進み出てきた。
「さあ、何を躊躇してるの。これは人の心を読む魔女よ。地球を乗っ取ろうとしてるのよ。やってしまいなさい。」
銃が火花を吹いたと同時に私は意識を失った。いや、正確には夢の中をさまよった。その夢は宇宙のようであり、海の中のようでもあった。
ふと気がつくと、目の前に父の顔があった。
「あれ、夢だったのかしら。ここはどこ?」
「良かった、危機一髪で間に合ったよ。」
「七海、パシーナでテレポートをする装置が完成したんだ。これですべての人類を救えるぞ。」
まだ、事情が分からずに私はただ呆然としていた。
「パシーナは声を伝えるだけではなかったんだよ。テレポートも出来たんだ。ランツブレイン社の最新の生物頭脳コンピューターの解析のおかげだ。七海からのさっきのパシーナの危機信号を受けてすぐに呼び出してみたんだ。こんなにうまく行くとは思わなかった。」
「じゃあ、さっきまでのグリーンパラダイス社のことは夢じゃなかったの。」
私は父に今日の話を伝えました。
「そうか、目の前から消えたとなると、アレス社長の妄想は魔女どころではなくなっているはずだ。人類の危機が早まったようだな。こちらの準備はだいぶ整ってきたぞ。」
続く
by susabi77
| 2007-10-03 10:41