2007年 09月 20日
第3章 第22話 |
「どうやって、この場所を見つけたのですか。」
「このパシーナだ。パシーナがここへ導いてくれた。私は最初は海の上で、くじらやイルカにパシオを吸盤で取り付けて、彼らと会話を楽しんでいたんだ。
すると、あるくじらが、海に伝わる地球からの贈り物だといって、このパシーナを私のところへ持ってきてくれたのだ。これを握るだけで、パシオをつけていないくじらたちとも会話が楽しめた。そして、ある日、大樹博士に相談したあの地球からのメッセージを聞いたのだよ。」
「地球が人類に反重力物質を与えた理由は何かしら。」
「その答えが、この場所にあると私は考えている。そうでなければこの場所に導かれないはずだから。その理由をみんなで探さなければならないのだ。」
「6億年も前にここの文明の主たちは、どういう役割を果たしていたのかしら。」
「役割とは面白い発想だね。七海。」
「最近、人間が地球に存在する役割は何だろうかと考えているから、つい。」
「この地底都市やさっきの海底トンネルをみて分かるように彼らは、地中に穴を掘る技術に優れていたようだ。それが得意になるように地球が知恵を授けたのだろう。でも、穴を掘ることがどれだけ地球にメリットがあるかが、よく分からないのだ。」
ノーチラス号はゆっくりと海底遺跡を巡っていったが、時々、海底から吹き上げる水流に大きく揺れていた。
「海底に海水が吹き上がる煙突みたいなものが沢山あるわね。それに、あの都市の中にもあちこちに小さな煙突状のものが沢山ついてるわ。」ミーサが興味深そうにいった。
「あの住居の様子をもっと近くで見てみたいのだが、これ以上近づけないのが残念だ。」
「ヴォスなら近づけます。それにヴォスなら照明を照らして窓から直接肉眼で見えますよ。空博士ご一緒にいかがですか。」
「それは願ってもないことだ。」
私たちはヴォスに乗り込んだ。私は後部の補助席でちょっと窮屈でしたが、置いていかれたくはありませんから文句は言えません。
近くで見る遺跡は、長年堆積した砂で黄土色一色でしたが、住居部のあちこちに煙突があって、海流が吹き上げていました。
『吹き上げている海流の温度は海水より高めです。』ヴォスが報告してくれた。
「彼らはこの温水が生きるエネルギーだったのだろう。プランクトンや原生生物がこの温水で生まれ食物連鎖が生まれたのだろう。」
「どの床にもみぞがいっぱいついているようね。」ミーサがいうとおりにすじが沢山ついてる。
「エディアカラ動物群の化石と同じだ。イソギンチャクやミミズの祖先といわれていて、オーストラリア大陸のエディアカラで大量の化石が発見されている。穴を掘るのに適しているし、蛇のように海も泳げる。」
続く
by susabi77
| 2007-09-20 10:35